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2023年08月16日

【赤ら顔】酒さ1期 紅斑血管拡張型の治療

医療の進歩は日進月歩。我々医療者も追いつくのに精一杯なこともあります。
特に酒さのような治療法が確立していない疾患については、スタンダード治療がよく変わります。
今回は酒さのなかでも「最も治療が難しい」ことで知られる、紅斑血管拡張型酒さの最新治療について解説していきます。

あなたの治療、実は間違っているかもしれませんよ?

よくある誤解

日本において酒さの治療方法は非常に錯綜しており、医師から間違った治療を推奨されている方を見かけることもあります。専門家に相談しているのに、それでは困りますよね。

まず初めにはっきり言ってしまうと、酒さの一期の人には
・イベルメクチンのクリーム
・ロゼックスのつけ薬
・アゼライン酸
これらの薬は基本的に効きません。
これらのつけ薬は酒さの二期、つまりブツブツのあるタイプの酒さに効く治療法です。

プロトピックやコレクチムなど、アトピーの薬を処方されるケースもあります。絶対ダメという程ではないものの、効く場合と効かない場合がある。場合によっては悪くなってしまいます。
アトピーと酒さを併発している方の場合は、アトピーの治療もすべきですのでプロトピックやコレクチムをファーストチョイスとして使用しても良いでしょう。ですがそうではない方の場合、酒さが悪化したという論文もあり、あまり優先的に使用すべき薬ではありません。

また、酒さで受診すると抗生物質の飲み薬を処方されるケースもあります。酒さの一期の場合、抗生物質の飲み薬では酒さが改善する方が多少いるかもしれないものの、本質的に良くなることはありません。

酒さ1期の適切な治療

では酒さの一期の場合、どうしたらいいのでしょうか?

実は酒さ一期の場合、レーザーや光治療で、拡張した毛細血管を縮小させるしかありません。そもそも酒さとは、何らかの原因により毛細血管が拡張してヘモグロビンの量が増え、それが透けることで赤く見える現象を指します。そのため、血管が収縮・消退しない限り酒さは改善しないのです。
ヘモグロビンに反応するレーザーや光を当てることで、熱を発生させて血管の細胞にダメージを与え、血管を消退させることが可能です。

ではレーザーや光ならなんでもいいのでしょうか?
日本においては、大体Vビーム・IPLによるフォト治療が多く行われています。次にNd:YAGレーザー・ポテンツァなどが用いられています。

Nd:YAGレーザーは日本で広く普及していますが、安全域が狭いという特徴があります。
安全域が狭い=効果を示す強さと副作用が出る強さにあまり幅がないということ。つまり強さ設定が非常に難しいのです。経験値が多く、慣れている医師でなければ効かなかったり、傷跡になったりしますので、治療選択の優先度はやや下がります。
ポテンツァに関しては治療効果の論文が充足していないため、いきなり選択する治療ではないと感じています。

症例紹介

症例①:酒さ一期、IPL(アイコン)での治療

1カ月に3回、IPLで治療した方の写真です。
ベースの赤みが施術後写真だとかなり改善していることが分かります。
また酒さの方は血管が拡張して顔が浮腫むため、治療後は浮腫みがとれてフェイスラインがスッキリする傾向にあります。

症例②:酒さ一期と二期の混在、IPL(アイコン)での治療

酒さの一期と二期が混在した方にIPL照射した症例です。6回照射したことで完璧とはいかないまでも赤みがかなり改善している症例です。プツプツは完全に改善、赤みがやや残っています。この後はつけ薬だけで落ち着いています。

症例③:皮膚診断機を使った検証、IPL(スターラックス)での治療
スターラックスでのIPL治療を12回行い、血管拡張がほぼクリアになった症例です。

よくある質問

Q:改善したあとも治療を続けたほうがいいのでしょうか?治療を続けないと、再発することはありますか?
A:一度改善するとその後落ち着き、特に治療が必要なくなるケースは多くあります。しかし半年~1年後、紫外線を浴びたりして再発することも少なくありません。酒さは慢性疾患ですので、どうしても何かのきっかけで再発することがあるのです。

Q:小鼻の周りだけ赤みが目立つのが気になります。その場合、選択すべき治療はなんでしょうか?
A:小鼻の周りだけが赤い場合、酒さである可能性は高くありません。酒さよりも、脂漏性皮膚炎や小鼻の周りだけ毛細血管が拡張しているケースの方が多いでしょう。
仮に脂漏性皮膚炎という湿疹の一種である場合、ステロイドやケトコナゾールという抗真菌薬などを塗布することで改善します。
原因不明であるものの、小鼻周りだけ毛細血管が拡張している場合、 VビームやNd:YAGレーザーで治療すると効果的です。

Q:IPL治療は酒さ以外に、肌質改善もできると聞きましたが本当ですか?
A:本当です。IPL自体はフォトフェイシャルであるため、シミが取れる・色が白くなるという効果もあります。
Q:IPL治療とVビーム治療はどちらがおすすめですか?
A:論文上、IPLとVビームの効果は同等と言われています。ただし副作用が少ないのはIPLだと報告されているので、医師個人としてはIPLをおすすめします。 ちなみに「どのIPLの機械がいいか」という内容の論文はありません。ただ、フォト治療では出力・パルス幅・波長を個別設定できる機械が多いのです。したがって、IPLの治療を選ぶ基準は機器ではなく、「どれだけ酒さの治療に慣れている医師や看護師が設定するか」がポイントになります。

まとめ

日本では酒さ一期に対する理解が低く、今もなおロゼックスやプロトピックを第一選択薬として処方するケースが散見されます。また、一般的にも酒さへの理解が浸透していないため、間違った治療方法を選んでしまうことも多くあるようです。

酒さでお悩みの方、もしかしたら酒さかも?とお思いの方。
ぜひ当院にお越しください。

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監修医師紹介

院長
花房 火月(ハナフサ ヒヅキ)
経歴
  • 平成18年3月  東京大学医学部医学科卒
  • 平成18年4月  癌研究会有明病院(初期研修医)
  • 平成19年4月  東京大学医学部附属病院(初期研修医)
  • 平成20年4月  東京大学医学部附属病院皮膚科・皮膚光線
    レーザー科(専門研修医)
  • 平成20年7月  東京大学医学部附属病院皮膚科・皮膚光線
    レーザー科(助教)
  • 平成20年12月  NTT東日本関東病院皮膚科(医員)
  • 平成22年7月  東京厚生年金病院皮膚科(レジデント)
  • 平成23年7月  三鷹はなふさ皮膚科開設
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