ピコ秒レーザーを使った刺青治療のデータ
ピコ秒レーザーを使った
刺青治療のデータ
刺青除去の歴史
刺青(タトゥー)そのものは紀元前12000年には行われていたことは確実で、その後も社会による頻度の差こそあれ、世界中で行われている施術です。それゆえ、刺青(タトゥー)に対する除去術もかなり昔から行われており、おそらく削皮術のようなものが行われていたと推測されています。
刺青(タトゥー)に対するレーザー治療は1965年、ゴールドマンによってQスイッチルビーレーザーを用いて行われるようになっていきました。その後、YAGレーザーやQスイッチアレキサンドライトレーザーを用いたレーザー治療が行われるようになってきました。Qスイッチレーザーというのは、100ns-5ns程度のパルス幅でレーザーを発射する機械のことです。
1980年代に入るとQスイッチレーザーが治療の中心となってきました。
レーザーが刺青除去に効果的な理由
レーザーが刺青を除去する原理ですが、
①光熱効果
②音響効果
の2つがあります。
古典的なものは光熱効果photothermal effectと呼ばれるもので、レーザーがターゲットとなる色素に反応し、そこから熱が発生し、その熱が色素粒子を破壊し、バラバラにする、という古典的なものです。刺青の粒子が小さいため、その粒子を破壊するためには理論的に10ns以下のパルス幅のレーザーが必要となります。その波長のレーザーを照射するには、従来のQスイッチレーザーでは不十分なことが多く、これまでレーザーを何度受けても刺青が取れないという経験をされた方も多いと思います。
そのため、よりパルス幅が短いレーザーが必要であると考えられるようになりました。
もう一つの新しい理論は音響波効果acoustic waves effectと呼ばれレーザーが色素に反応すると色素粒子内で強烈な音響波が発生し、それが色素粒子をバラバラにするという理論です。音響波効果という点においても、理論的にはパルス幅が短いほど、色素の粒子を破壊する効果が高くなることがわかっています。
これらの点から、従来のQスイッチレーザーよりパルス幅が短いピコ秒の単位でレーザーを照射する機械の開発が進められました。ピコ秒レーザーが実際に使用されるようになったのは2010年後半になってからです。
ピコ秒レーザーによる報告された効果
‘Comparison of responses of tattoos to picosecond and nanosecond Q-switched neodymium: YAG lasers’
Ross Vらによるとピコ秒YAGレーザーとQスイッチYAGレーザーを比較するために、黒い刺青の半分にピコ秒レーザー、残り半分にQスイッチレーザーをそれぞれ4週のインターバルで4回治療を行いました。その結果、ピコレーザーを照射した方では11名で『70%以上の退色が見られた』のに対し、Qスイッチレーザーを照射した群で『70%以上退色した人はいなかった』と報告しています。その結果から、黒い刺青に対して、ピコ秒レーザーがQスイッチレーザーよりも優れていると結論づけています。
‘Treatment of tattoos with a picosecond alexandrite laser: a prospective trial’
Saedi Nらによると12名の患者に対するピコ秒アレキサンドライトレーザーを使った治験で、平均4.25回の治療後、全ての患者で75%以上、刺青が消えたとされています。
‘Successful and rapid treatment of blue and green tattoo pigment with a novel picosecond laser’
Brauer JAらによると、青色、もしくは緑色の12個の刺青に対して、ピコ秒アレキサンドライトレーザーを使った1~2回の治療で少なくとも75%以上の刺青の退色が見られ2/3以上の割合で100%近い退色が見られたとしています。
ピコ秒レーザーの副作用
ピコ秒レーザーによる副作用は、論文によって0-50%の水泡形成の頻度が報告されています。刺青の濃さやレーザーの出力によって水泡形成が現れる頻度が異なります。例えば、刺青に対してかなり強くレーザーを照射すれば当然、水泡形成がおこる頻度は高まるでしょう。ただし、水泡形成から瘢痕となることはなく、水泡形成はあくまで一時的な副作用に止まります。
レーザーには、つきものである炎症後色素沈着ですが、ピコ秒レーザーはQスイッチレーザーより頻度は低いとはいえ、起こり得ます。Saedi Nらによると16.7%の割合で炎症後色素沈着が見られたとしています。
刺青のレーザー治療では色素脱失(通常の色素まで抜けてしまうこと)がしばしば見られますが、同じくSaedi Nらによると25%の患者で色素脱失が見られたとのことです。
色素脱失に関しては一時的なもので徐々に回復してくる場合と、そうでない場合があります。そのほかのデータでも6~25%程度に一過性の色素脱失も含め色素脱失が見られたとのことです。
病理学的考察
Qスイッチレーザーを刺青に照射した場合と、ピコ秒レーザーを刺青に照射したものを比較すると後者の方がより細かく色素粒子を粉砕していることが分かります。その差は歴然でQスイッチでは粒子が砂利のようになるのに対して、後者は砂のようにまで小さく粒子が粉砕されている様子がよく分かります。この差が効果に影響を与えていることは言うまでもありません。
症例写真
R.Salujaらによる提供 QスイッチYAGレーザーを7回行っても十分に取れなかった症例ですが、ピコシュアを1回行うことで、かなりクリアになっています。これがピコ秒レーザーの効果を顕著に表しております。
J. Doverらによる提供 ピコシュアの4回治療後です。
J. Doverらによる提供 ピコシュアによる4回治療後です。
Tatawayによる提供 ピコシュアによる5回治療後です。
Roy Geronemusによる提供 ピコシュア3回治療後の写真 緑色にもよく効いていることが分かります。
Sharon Gertzmanによる提供 ピコシュアによる4回治療後です。
Emil Tanghettiによる提供 ピコシュアによる3回治療後です。色素脱失が見られています。
Bare Again ピコシュアによる2回治療後です。
まとめ
ピコ秒レーザーは刺青の色素粒子を音響効果により粉砕することで、これまでのQスイッチレーザーで取れなかった刺青に高い効果を期待できます。
当院で使用している755nmのピコ秒レーザーは、黒色、青色、緑色の刺青に対して、従来のQスイッチレーザーと比較するとより早く、より強力に刺青を除去することを期待できます。
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