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美容コラム

ニキビ跡を改善するTCAクロスはデメリットが目立つ!セルフTCAも危険!施術を受けるときの注意点

ニキビ跡の治療のひとつにTCAクロスがありますが、デメリットや注意点があります。この記事ではTCAクロスで期待できる効果や注意点について解説しています。TCAクロスによるニキビ跡治療を検討している方は参考にしてみてください。

TCAクロスとは

TCAクロス(Trichloroacetic Acid Chemical Reconstruction Of Skin Scars)とは、高濃度のトリクロロ酢酸(TCA)を肌の凹み・クレーターに塗ることで、傷跡部分の皮膚の再構築を促す治療です。TCAクロスはTCAピンポイントピーリングと呼ばれることもあります。
トリクロロ酢酸はタンパク質の変性作用が強い酸で、皮膚科のイボ治療にも用いられているる薬剤です。人為的に酸で皮膚組織を破壊することで、コラーゲンの産生が活性化し、ニキビ跡の凹みの改善を目指します。
ニキビ跡治療では肌の状態に合わせて、50~100%の高濃度のトリクロロ酢酸を使用します。

TCAピーリングとの違い

TCAクロスとよく似ている施術に、TCAピーリングがあります。TCAクロスとTCAピーリングの違いは、使用するトリクロロ酢酸の濃度です。TCAピーリングでは、10~30%の濃度のトリクロロ酢酸を使用するので作用は、TCAクロスよりも比較的効果が穏やかです。 しかしながら、トリクロロ酢酸は国内で通常ケミカルピーリングで用いられる薬剤よりも作用が強力であるため、TCAピーリングでさえも、施術後にかさぶたになる、傷跡が残るなどのダウンタイムがあります。
TCAクロスは、より濃度の高いトリクロロ酢酸をニキビ跡にピンポイントで塗布し、薬剤を真皮まで届けます。

TCAクロスの効果とリスクは紙一重

ニキビ跡の中でもクレーターは皮膚のダメージが真皮にまで及んでいるため、自然治癒が難しい特徴があります。TCAクロスは経験のある医師が正しく行えば、肌の凹みを底上げしニキビ跡を目立たなくできる可能性があります。
また、クレーターの治療にはTCAクロス以外にも、皮膚に微細な穴を開けてコラーゲン産生を促す「ダーマペン」や「炭酸ガスレーザー」、下に引っ張っている皮膚を切る「サブシジョン」などの種類がありますが、TCAクロスが得意とするのが、アイスピック型のニキビ跡や凹みが深いニキビ跡です。
アイスピック型は小さな穴を開けたようなニキビ跡で、真皮の深い部分までダメージが及んでいるので、アプローチによっては十分な効果を得られないことがありますが、TCAクロスは真皮まで薬剤が届くので、深いニキビ跡を改善できます。 ただし、TCAクロスは日本人に塗布した場合、かえってニキビ跡が悪化する等のリスクがあります。「副作用」の項目で詳しく解説します。

TCAクロスの施術後の経過

TCAクロスを塗布した部分は、皮膚のたんぱく質と化学反応を起こすため、数時間ほど白くなります(frostingといいます)。その後は茶色のカサブタになりますが、元のニキビ跡よりもカサブタの範囲が広くなることが多く、ニキビ跡が広がったように感じることがあります。
カサブタの下にある皮膚では、新しくできたコラーゲンが肌の凹みを埋めていくので、ニキビ跡が浅くなっていきます。施術による強い痛みはありませんが、高濃度のトリクロロ酢酸を塗るため、肌にヒリヒリとした刺激が数時間ほど続きます。
また、皮膚の炎症が起こり、長期間肌に赤みが残ることも少なくありません。

TCAクロスのダウンタイム

TCAクロスのダウンタイムは7日程度です。患部のカサブタは自然に剥がれます。カサブタを無理に剥がすと、傷跡が残る原因になります。また、TCAクロスの施術後に、炎症による色素沈着が起こる可能性もあります。

TCAクロスでみられる副作用

高濃度の酸性薬剤を使うTCAクロスは、副作用のリスクがあります。TCAクロスで起こりやすい副作用は以下です。


炎症後色素沈着(黒ずみ)

TCAクロスによるニキビ跡治療は、酸性薬剤によりマイルドな化学火傷を起こしている状態です。施術後に炎症が起こるため、メラニン色素の産生が促されて、色素沈着となることがあります。
日本人など黄色人種は黒色メラニンが多く、色素沈着が目立ちやすいです。色素沈着は時間の経過とともに改善することも多いですが、患部が深いと薄いシミが残るリスクもあります。


炎症後紅斑(赤み)

TCAクロスで薬剤を塗布した部位は、炎症による赤みが長く続きます。半年以上続くことも多く、1年以上続くことも稀ではありません。肌の白い方など肌質によっては、かえってニキビ跡が目立ってしまうこともあります。


治療部位が目立つ(白斑)

人によっては、一時的に色素脱失が起こり、白斑ができることもあります。


ニキビ跡が広がる

TCAクロスで塗布するトリクロロ酢酸の濃度や量が適切でないと、ニキビ跡が広がるリスクがあります。また、皮膚の変性壊死が起こることで、雑菌が入り、感染症を起こすこともあります。

TCAクロスを受けるときの注意点

TCAクロスは、アイスピック型のニキビ跡の治療として世界的に行われていますが、施術を受ける際には注意が必要です。トリクロロ酢酸はタンパク質を変性させる作用が強いため、日本人だと炎症による赤みや色素沈着を引き起こしやすいのです。 TCAクロスによる赤みや色素沈着は時間の経過とともに改善しますが、半年程度続くケースがほとんどで、赤みに至っては1年以上続くケースも多くあります。また、濃度の高い酸性薬剤をニキビ跡に塗布するため組織が壊死したり、体質によってはニキビ跡が瘢痕化したり広がったりして、ニキビ跡が悪化することもあります。
TCAクロスは、ニキビ跡の改善効果がまちまちで、施術効果を実感できない方もいます。一定の効果があっても、赤みや色素沈着など新たな肌のトラブルで悩む患者様も少なくありません。
このような理由から、当院はTCAクロスを行っておらず、炭酸ガスレーザーによるニキビ跡治療を行っています。

ニキビ跡を改善するなら炭酸ガスレーザー

安全性を重視してニキビ跡を改善するのなら、炭酸ガスレーザーが適しています。炭酸ガスは水に吸収されやすい性質があり、照射により皮膚の水分と反応し熱エネルギーを発生させることで、照射箇所の皮膚を蒸散できます。
炭酸ガスレーザーでボックス型のニキビ跡のエッジを削る、またはアイスピック型のニキビ跡を焼灼します。ニキビ跡の凹凸部分をなめらかにし、目立たなくさせることが可能です。この治療のシステマティックレビューでは、ニキビ跡に関して炭酸ガスレーザーでは25~81%の改善が見られています。
ダウンタイムは7日程度で、施術後1日でカサブタになり、皮膚が再生し、カサブタは自然に剥がれます。
Radwa Ahmed(※)らによると、炭酸ガスレーザーはTACクロスと比べると副作用が少なく、安全性が高く、効果も高いことを報告しています。
TCAクロスはリスクをともなうニキビ跡治療なので、当院は炭酸ガスレーザーによる治療をご提案しております。

(※)J Cosmet Laser Ther
. 2014 Jan;16(1):8-13. doi: 10.3109/14764172.2013.854633. Epub 2013 Dec 14.
Randomized clinical trial of CO₂ LASER pinpoint irradiation technique versus chemical reconstruction of skin scars (CROSS) in treating ice pick acne scars

まとめ

TCAクロスは高濃度のトリクロロ酢酸をピンポイントに塗るニキビ跡治療です。理論的には皮膚組織を破壊することで、深い凹みのあるニキビ跡に効果が期待できますが、的確な効果を得るには、相当に熟達した医師・クリニックでの施術を受ける必要があります。
更に、日本人が行うと肌の赤みや色素沈着が長期間続くのが難点で、体質によってはニキビ跡が悪化するリスクが高い治療法です。
また、最近セルフTCAクロスを行う方も多いようです。こちらは非常に危険な行為のため、行わないようご注意ください。
はなふさ皮膚科では、患者様のお肌の経過や安全性を配慮して、炭酸ガスレーザーによるニキビ跡の治療を行っています。ニキビ跡のクレーター肌でお悩みの方は、ぜひご相談ください。

監修医師紹介

院長
花房 火月(ハナフサ ヒヅキ)
経歴
  • 平成18年3月  東京大学医学部医学科卒
  • 平成18年4月  癌研究会有明病院(初期研修医)
  • 平成19年4月  東京大学医学部附属病院(初期研修医)
  • 平成20年4月  東京大学医学部附属病院皮膚科・皮膚光線
    レーザー科(専門研修医)
  • 平成20年7月  東京大学医学部附属病院皮膚科・皮膚光線
    レーザー科(助教)
  • 平成20年12月  NTT東日本関東病院皮膚科(医員)
  • 平成22年7月  東京厚生年金病院皮膚科(レジデント)
  • 平成23年7月  三鷹はなふさ皮膚科開設
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