アトピーやニキビ跡、虫刺されのあとが色素沈着として残ってしまったことはありませんか?
炎症後色素沈着と呼ばれるこの症状、なかなか治らなくて困りますよね。
日々皮膚科にも、この炎症後色素沈着について多くの相談が寄せられます。
今回の記事ではそんな厄介な炎症後色素沈着について、対処法含めまるっとご紹介していきます。
ぜひ最後までお読みいただき、正しい改善方法を知ってくださいね。
炎症後色素沈着とは?
皮膚に何かしらの炎症が起こった後に、大体数週間、長くて1ヶ月後ほどに浮き上がってくる褐色のシミのような斑点を、炎症後色素沈着と言います。(厳密にはシミとは異なります)色素沈着の前に、炎症のきっかけとなるアトピーやニキビや怪我や火傷、虫刺されなどの炎症を引き起こす何かがあった上で色素沈着が起こるものを、炎症後色素沈着と呼びます。
炎症後紅斑と炎症後色素沈着の見分け方
炎症後色素沈着と見分けづらい症状の一つに「炎症後紅斑(炎症のあとに皮膚が赤くなること)」があります。
炎症後紅斑とは血管拡張が残っている状態で、赤みが特徴です。
炎症後色素沈着とはメラニンが沢山定着している状態で、褐色が特徴です。
ただニキビ跡や火傷の跡は赤みと褐色が両方混ざっていることが多くあり、炎症後紅斑と炎症後色素沈着の違いが非常にわかりづらいのです。ただし、それぞれ治療方針が異なるため、まず見分け方(どちらの方が強く影響しているか)からお伝えしていきましょう。
気になる病変の部位に、透明なグラス等をギュッと押し付けてみてください。透明なグラスをギュッと押し付けて、病変が消えるのであれば炎症後紅斑です。これは、血管の拡張は押しつぶすと見えなくなるためです。病変が無くならなければ、炎症後色素沈着ですね。簡単
な検査方法なので、ぜひご自宅でやってみてください。
炎症後色素沈着の原因疾患
炎症後色素沈着が起こる原因は、皮膚に炎症を起こすもの全てと言っていいでしょう。アトピー性皮膚炎や乾癬等の炎症性皮膚疾患、火傷や怪我による外傷、ニキビ等の炎症性疾患…これら全てが炎症後色素沈着の原因となり得ます。
炎症後色素沈着と紫外線との関係
紫外線を浴びると炎症後色素沈着は悪化し、長引きやすくなります。
皮膚に炎症が起こると、メラノサイト(メラニンを作っている細胞)に「もっと働け」という刺激が加わります。これが炎症後色素沈着が発生するメカニズムと考えられており、皮膚が紫外線を浴びたときも同様の刺激が起こります。したがって、炎症後色素沈着でお悩みの方が紫外線を浴びてしまうと、炎症後色素沈着が悪化し長期化するのです。
炎症後色素沈着の原因病変の場所
治療方針にもかかわるので、少し専門的な話をしましょう。
皮膚の構造はまず、皮膚の表面に角層(死んだ角化細胞)があります。その下に表皮があってここに角化細胞があります。その下に真皮(コラーゲンやエラスチンでできている一番太い層)があります。メラノサイト(メラニンを作っている細胞)は表皮基底膜(表皮と真皮の境目)にあり、作られたメラニンはターンオーバーによって表皮の上の方まで徐々に移動します。最終的には角質に入り、その後脱落していきます。
2つの炎症後色素沈着
炎症後色素沈着
皮膚に何らかの炎症が加わると、このメラノサイトが頑張りすぎてしまってメラニンをたくさん作ってしまいます。それが炎症後色素沈着です。基本的には表皮にメラニンがたくさん溜まっている状態であり、これを表皮性の炎症後色素沈着と呼びます。
真皮性炎症後色素沈着
時々、メラニンが真皮の方に溢れ落ちてしまうことがあります。これを真皮性炎症後色素沈着と呼びます。
これが治療にも影響しますので、炎症後色素沈着にはまずこの2つが存在することをご理解ください。
見分け方
基本的に、ほとんどの場合が表皮性の炎症後色素沈着です。
ただ1~2年経っても変わらず残っていて、かつやや青っぽい見た目があると真皮性が疑われます。
治療方法~表皮性~
一般的には炎症後色素沈着は表皮の問題です。したがって炎症が収まってメラノサイトの働きが正常化し、ターンオーバーが済んでしまえば、表皮性の炎症後色素沈着は自然と解決するはずです。刺激を加えなければ炎症後色素沈着は数カ月~半年程で何もしなくても治っていきます。
ただし顔など部位によっては紫外線や摩擦の刺激を受けるため、長引く場合があることも事実です。
メラノサイトが治療の刺激によって元気になりすぎることがあるため、まずレーザーは滅多に照射しません。レチノールやトレチノイン・ハイドロキノン等のつけ薬を組み合わせて治療していきます。
またビタミンCの内服薬やトラネキサム酸の飲み薬で治療することもあります。
ピーリングやイオン導入もOKです。こういった保存的な治療・レーザーを使わない治療で炎症後色素沈着は治療することが多いと思います。痛みもなく、ダウンタイムもありません。
治療方法~真皮性~
逆に、真皮はターンオーバーしません。したがって真皮性の炎症後色素沈着の場合、放っておいてもなかなか消えないのです。
炎症後色素沈着が1年ぐらい経っても全然良くならない場合は真皮性である可能性がありますので、すごく慎重にレーザー治療にトライすることになります。
レーザー治療でメラニンを破壊するのですが、レーザー照射によってまた皮膚に炎症が起こり、メラノサイトが元気になって炎症後色素沈着がまた起こる…というリスクもはらんでいます。したがってレーザーをやるときはかなり慎重にやるべきですし、照射後は必ずつけ薬・飲み薬を併用し、場合によってはイオン導入等も併用することになります。もしレーザーが奏功すれば、2カ月に1回照射のペースで2~3回重ねる形になります。ゴムで弾かれるような痛みを伴うことが普通です。
まとめ
いかがでしたか?
一口に炎症後色素沈着といっても、特徴によって治療方法が異なります。
またいずれの治療も自費診療となり、保険は使えないことをご承知おきください。
もしお悩みのかたがいれば、ぜひ当院までお越しくださいね。